枕賢

北朝鮮をロックした日 ライバッハ・デイの枕賢のレビュー・感想・評価

4.0
試写会ありがとうございました。

映画好きには「アイアン・スカイ」の音楽でお馴染み・・・かもしれないライバッハを、北朝鮮が2015年の光復節(終戦記念日=祖国解放記念日)になぜか招聘した模様を記録した映画。

全体主義ファシズムプロパガンダパロディのバンドがまんま全体主義国家の北朝鮮でコンサートを行うという限りなく出オチ的な状況であり、実際冒頭から半分ぐらいまでは共産圏プロパガンダとそのパロディで、ロックの熱狂とファシズムの熱狂は同一の種類のものであるという主張を繰り返す。

しかしながら、ライバッハは旧ユーゴのバンドなので話は一筋縄ではいかない。ユーゴスラビアは東欧の中ではチトー政権下でソ連とはかなり異なる路線を歩んできたとはいえ共産圏の全体主義国家であったことには変わりはない。かつての全体主義国家の国民という目線が入った時点から、映画は、なんとかして北朝鮮当局や各担当者との妥協点という名前の相互理解を探る方向に変わってくる。

ただし、そこは北朝鮮なのでいつも通り口は固く、学習性無気力感漂うことに変わりはない。コンサートの手伝いに行けとだけ言われて来たはいいが何をすればいいかまるでわからないと思しき数十名は漫然と設営を眺める。高官の子弟なのか生意気そうな若者が訳もわからず口を挟んでくる。カメラの前に決して顔を晒さない検閲官。アイドルグループのようななりの音楽学校の生徒がアリランを歌ってある種の期待を外さない。

このコンサートによって何か達成したかと言えば、この年のニュースで悪い知らせがなかったのがよい知らせなのだろう。この映画が2015年ではなく2018年だったらまるで違う様相になっていたであろうことを想定しながら楽しみました。

個人的には作中ちらっと引用される北朝鮮映画「花を売る乙女 」 (1972) が気になった。時期的に違うのだろうけどテクニカラーみたいな色味でよさげですね。
枕賢

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