このレビューはネタバレを含みます
1969年、アメリカ・ロサンゼルス・ハリウッド。ベトナム戦争最中、激動の時代を生きた、映画人たち。
1950年代のドラマ出演により一躍有名になったが旬を過ぎて今や若手俳優に主役の座を奪われ衰退しかけている俳優、リック・ダルトン
リックのスタントマン、クリフ・ブース
そして、映画監督ロマン・ポランスキーの妻であり、妊娠中であるとともに、これからが期待される女優でもあった、シャーロン・テート
チャールズ・マンソン率いるヒッピー族による、シャーロン・テート殺人事件をモチーフとしているが、映画の終わり方は事実と全く異なる上に、主役であるリックやクリフは架空の人物だ。
しかし、3人のキャラクターが立体的に描かれ、彼らが生きた時代に、それぞれがどのように輝いていたかを映画は物語る。
スタントマンとその犬に散々に撃退されるヒッピーの狂信者たち。薬に酩酊するブラット・ピット演じるクリフとヒッピー集団の会話や、その後の展開が、凄まじく恐ろしいが、監督ならではのユーモアも相まっている。
そして、なにより、人殺しの狂信者たちが注目を集め、一個人の女優が殺人事件の悲劇の被害者とされてしまった事実を、ただの不法侵入者たちが撃退された事件として片付けてしまった、その淡白な終わり方が、事実を変えることはできないが、事実を見つめる視点を変えることができる映画ならではの技であると感じ、最後、リックとシャーロンがインターホン越しに話すあっさりした終わり方が好きだと思った。