Erica

ゴッドランド/GODLANDのEricaのネタバレレビュー・内容・結末

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

氷河の上に立ってカメラを構える牧師と、広く澄んだ空に血塗られた跡。このポスターに、自然の美しさと、その中に潜む不穏な気配を感じ取る。

19世紀後半。アイスランドがデンマーク統治下にあった時代。
教会建設のため、アイスランドに赴くデンマーク人牧師のルーカス。海路を通れば容易に辿り着くものを、その土地の人と自然を見るために過酷な陸路を選択する。

壮大な自然の美しさに息を呑む。
滝、水の流れ、流氷、青々と茂る山肌、荒々しい岩肌。その場所で暮らす、動物たちと人間。
自然の前では、人間も動物も、等しく無力であると思い知らされる。生命の営みに、死に、自然はその美しさを、寛大さを、そして時として残酷さを見せる。

ルーカスは、そんなアイスランドの自然に圧倒されるが、言語が通じない環境下で徐々に孤立し、太刀打ちできない自然の過酷さの中で衰弱していく様子が描かれる。

その地で使われる言語を全く知らない状態で、その地に暮らす人間の何を見ることができるだろうか。
言語もわからず、自ら歩み寄ろうともしない。
道中、「水位が増して渡河できないため、2日様子を見よう」という案内人ラグナルの提案に反して、ルーカスの独断専行によって川を渡った結果、通訳が亡くなってしまう。「これも神の思し召しだ」という彼だが、懺悔の色は窺えない。
教会の建設が終わっていないから、と結婚式を取り仕切らない。
挙げ句の果てに、姦淫、殺人にまで手を染める、その有り様、そして、それ以上に、自らの愚行と罪深さに全く心に留めない。

その対極として描かれていた、案内人ラグナル。
無礼且つ無愛想だが、道中手を怪我したルーカスを心配し、瀕死状態の彼を目的地まで運ぶ。
印象的だったのは、教会建設中、ルーカスに「聖職者になるにはどうしたら良いのか」と問う場面と、ルーカスに自らの出自や家族事情を話し、「祈ってくれ」と自らの罪を告白する場面。
己の罪深さに対して、羞恥心、怒り、後悔など、ぐちゃぐちゃに混ざった感情を抱えて生きてきたのかもしれないと思わされた。

本然の美しさが感じられる自然とは対照的に、最後まで人間の汚さが垣間見える作品だったが、姉妹の妹であるアイダの純粋無垢さに心救われた気がした。
Erica

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