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グッバイ、リチャード!の教授のレビュー・感想・評価

グッバイ、リチャード!(2018年製作の映画)
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僕は白塗りで、超大作に出ているジョニー・デップにあまり興味が持てない。「異形」の物語が好きなはずなのに例えばティム・バートンとワイワイやっている作品たちも好きではない。
全体的に力んだ感じの演技も含めてどことなく薄っぺらく感じてしまったりもする。

そういった意味で本作のジョニー・デップの枯れた、力ない演技はとても素晴らしいと思えた。余命宣告に対してむしろ拗らせた生き方を変えず、純化させていくように邁進していく、その一点において、本作の低予算でチープな作劇も含めて、とても等身大に感じて、全編に亘り「本当はこういう感じで地味に俳優をやりたい」という風な独白にも映った。

プライベートな部分というのを仄かし、匂わせながら商業映画として提出してしまう贅沢みたいなものは、良し悪しだと思うが、本作はそれが「良い」という形で出ている…とは思う。

概ね、特に文句を垂れるほどの嫌な映画でもないのだが、この全編に漂う緩さが、意図的なものなのか、それとも単に詰めが甘いのか、がハッキリしない。
その辺りの焦点の絞られていない感じというのが、如実にラストに噴出してしまい心底ガッカリしてしまう。
そこで、逆算的に、本作が取り扱う「死」に対して決定的な意思がなかったということ。それが映画を弛緩させてしまったと気付かされてしまう。

「感動」みたいなものを生身で伝えようとする時に「死生観」というものには誠実であって欲しいと思う。
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