川田章吾

焼肉ドラゴンの川田章吾のレビュー・感想・評価

焼肉ドラゴン(2018年製作の映画)
3.2
うーん…いろいろ好きな役者やシーンはあるのだけど、物語が弱い。
演劇の作品を映画化して成功したのって『アマデウス』とか『カメラを止めるなら』ぐらいしか知らない。
だから、映画と演劇って似て非なるものだから、元ネタが演劇のこの作品もイマイチ盛り上がらないんだよな〜。

実際に、この作品をシーンごとに見ると、人間模様がとてもよく描かれている。
例えば、お父さんがどれだけの苦難にあいながら子どもたちを育ててきたかってこと。在日朝鮮人たちは、歴史に翻弄されながら死ぬ思いで日本の社会で生きてきたんだ。「朝鮮」とかそういう枠組みを外して見た時に、その苦難や思いは計り知れない。

映画のシーンで日本の公務員の人たちが「ルール」を振りかざし、在日朝鮮人の人たちを記号化するところがある。そうした彼らの苦しさに目を向けず立ち退きを命じる日本人の様は、まさに日本政府が自分たちの都合で「はい、今日から日本人じゃなくて朝鮮人に戻りました〜」と告げて、社会的に厳しい状況に追い込まれた彼らの姿を象徴している。

そういう苦難の中から生じる、彼らの雄叫び。これは非常に演劇的には良い。
しかし、映画的にはただ単にそれらのシーンを紡ぐだけでは全体像が見えてこない。
演劇はライブに近いから部分的な熱量が大事なんだけど、映画は編集できるから全体像のまとまりが出来てないとカタルシスがあまり機能しない。
だからこそ、もったいなかったし、イマイチこの作品がまとまりを持たない理由なんじゃないのかな。
川田章吾

川田章吾