映画館で。
2019年の「ロッキー」シリーズの続編であり、「クリード チャンプを継ぐ男」の続編でもある作品。
監督はスティーブン・ケイプル・ジュニア。
あらすじ
かつてのボクシング世界ヘビー級王者アポロ・クリードの遺児アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン「ブラックパンサー」)は亡き父の親友ロッキー・バルボア(シルヴェスター・スタローン「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」)の指導のもと、タイトルマッチに勝利し現王者となった。一方その頃、かつてアポロの命を奪ったロシア人ボクサー、イワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン「スティール・サンダー」)は息子ヴィクター(フローリアン・ムンテアヌ)を最強の戦士に仕立て上げ、ロッキーへの復讐の機会を伺っていた。
前作「クリード チャンプを継ぐ男」は以前書いたレビューの熱量でも分かる通り、ものすごく血脇肉踊った、個人的には(世間的にもだろうが!)大傑作だった。
思えば、以前にも増して、ボクシング映画にハマったのもこの頃からだろう、それくらい思い入れのある作品。
そんな大傑作「クリード」シリーズの続編が制作されるとあっては観ないわけにはいかない!!ということで2019年の公開作品としては1発目の作品として今作を選び、鑑賞しました。
ただし、懸念すべき点が1つ。監督が前作のライアン・クーグラーではないという点。
どうやら、こちらもMCUの新たな傑作であり、黒人主体のヒーローものとしても名を残した「ブラックパンサー」に専念するために断念したらしいが…果たして新しい監督は前作程の熱量を与えてはくれるのか…?
結論から言うと、熱量はあった!!やっぱりものすごく!!ただし、前作程ではなかったかなぁ…というところ。
全体的にはすごく良くできてる。監督スティーブン・ケイプル・ジュニア的にも、多分相当の気合を持って制作にあたったであろうことは作品の隅々から感じられる。
前作の戦いを経て、師であり親友でもあるロッキーとの出会いや恋人ビアンカ(テッサ・トンプソン「マイティ・ソー バトルロイヤル」)といった守るべき存在ができたことで、人間としてもボクサーとしても大きく成長したクリードを丁寧に描写している。
また、今作で敵対するドラゴ親子もいいんだ。個人的に前作で対峙するコンランはいけ好かねえ野郎であまり好きになれなかったのだが、今作のドラゴ親子、特に親父のイワンに関しては、ホームマッチでロッキーに敗れたことで人生が狂わされ、かつての栄光は何処へやら落ちぶれた生活を過ごしている描写が哀しい。
その怒りを、その復讐心を糧にして生み出されたヴィクターもまた、哀しきモンスターというか、野性味溢れるまさに「獣」な戦士という感じが出てて「只者ではなさ」がそのバックボーンありきで魅力的にキャラクタナイズされていて、こちら側もクリードとはまた異なる意味で応援したくなる。
やっぱ、対戦する相手側にもドラマ性があると物語としても大きな推進力を発揮するということが実感できるキャラクターだった。
両者が対峙する終盤、ビアンカとの間に愛娘ができたことで「守るべき存在」がまた1つ生まれたことで、1人の男から1人の父親としての強さをも併せ持ったクリード。
ロッキーとの新たな訓練地で「試合に勝って、勝負に負けた」散々たる第1戦を経て、あの血湧き肉躍るBGMの力もあって、荒涼たる大地で雄々しく立ち上がる佇まい、そして試合でのいくら倒されても屈しない熱きファイトは前作と同じくらい俺自身も感銘を受けたが、それ以上に個人的に今作では忘れられないシーンがある。
かつて親子を見捨てた母親ルドミラ・ドラゴ(ブリジット・ニールセン「エクセペンタブル・レディズ」)が第1戦の反響を鑑みて、試合を見に来てたんだけど、試合終盤、クリードに追い詰められ負けそうになったことで、またも親子を見捨て、会場を後にしてしまう。
立ち去った後の誰もいなくなった席を落胆した表情で見つめるヴィクター…。
あれだけ強そうに見えたヴィクターがまるで授業参観で誰も見に来てくれなかった子どものように寂しげな表情を見せたことで、正直涙が止まらなかった。
戦闘マシーンとして自分の感情を押し殺し、父親の悲願のために邁進し続けた1人の男も、やはり人間だった瞬間というか、その脆く崩れ去ったプライドの果てに見える感情に胸を打たれる。
ただ、そんなヴィクターに、それまで厳格なトレーナーでしかなかった父親イワンが初めて見せた「父親としての」ある行動…。アポロ戦でロッキーですらやらなかったこの行動をドラゴがとる意味を思うと男泣きせずにはいられるだろうか!!否、そんなことは到底無理!!泣いたっ!!
「映画秘宝」で町山さんが今作をして「ドラゴの物語」と述べることがあったけど、まさにその通り、このシーンだけでも本作を観た甲斐が、そして「ロッキー4/炎の友情」から実に34年の月日を経て本作を作られた理由があったと思った。
そんな感じで、はっきり言えば実にドラマチックでよく出来てる作品なことは間違いない。けど前作の思い入れが強い自分にとっては、やはり前作で心の底から感じた「滾り」以上のものまではいかなかったのは残念だった…。
多分、このままじゃ終わらないであろうし、終わって欲しくない3作目。クリードとロッキーの絆の果てに待ち受けるものは…是非とも監督ライアン・クーグラーにカムバックしてもらって劇場で観られる日を心待ちにしておきたい!!