こなつ

I am Sam アイ・アム・サムのこなつのレビュー・感想・評価

I am Sam アイ・アム・サム(2001年製作の映画)
3.8
2002年上映、アメリカ/ドラマ

知的障害を抱えた父親と幼い娘との純粋な愛を描いた作品。

個性ある役を得意とする性格俳優、ショーン・ペンの演技に終始圧倒された。マドンナとの結婚で一躍注目の的となった1985年頃、人一倍シャイな性格の癖に激しい気性で何度も警察沙汰になっていた記憶が強いショーン。その後数々のヒット作品に出演し、オスカー俳優にまで上り詰めた実力派だ。

この作品は、公開当時かなり話題になっていたが、観る機会がなくて今回鑑賞。

7歳程度の知能しかないサム(ショーン・ペン)は、男手ひとつで娘ルーシー(ダコタ・ファイニング)を育てている。しかし、成長に伴って子供の知能の方が上回っていく。やがて彼は家庭訪問に来たソーシャルワーカーに養育能力なしと判断され、娘のルーシーを取り上げられてしまう。それでも愛娘と暮らしたいと願う彼は女性の敏腕弁護士リタ(ミシェル・ファイファー)と共に奮闘するという物語。

サムの友人役の4人中2人は、実際の知的障害者が演じていることに驚く。撮影で彼らはセリフを覚えるのが難しく、アドリブの飛び交う状態だったらしいが、それがリアリティのあるシーンをいくつも作り、サム役のショーンの演技も自然体そのもの、その友人達の中で障害者として全く違和感を感じない演技が素晴らしい。

全編ビートルズのカバー曲が流れているのもより一層感動を呼び起こす。障害者施設の利用者の多くがビートルズを好きだったという理由によるのも納得出来る。また愛娘ルーシーの名前もビートルズの楽曲のタイトルから付けられている。

娘役のルーシーを演じた子役ダコタ・ファニング(7歳)の天使のような愛らしさ、演技力は何度も涙を誘う。2歳の時のルーシーも似ていると思ったら、ダコタの実の妹が演じていた。

最初は成り行きで弁護を引き受けたやり手弁護士リタ(ミシェル・ファーファー)も次第にサム親子の純粋な愛情に心を動かされていく。そして頑なにルーシーの養育を主張していた里親ランディ(ローラ・ダーン)までもが、強い絆で結ばれているサムとルーシーの愛を認めるようになる。

着想のヒントになったことはあってもこれを実話と考えるのはなかなか難しい。子育てにはサムのような無償の愛は理想だが、現実には愛情だけでは育てられない。経済力も必要だし、子供と言えども成長していけば一人の人格として向き合い、親としての忍耐も必要になる。だから物語の中でサムとルーシーの深い絆に感動しながらも、ルーシーにとってはサムと二人で生きることが果たして本当に最良の道なのか、考えずにはいられなかった。
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