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マローボーン家の掟のmarohideのレビュー・感想・評価

マローボーン家の掟(2017年製作の映画)
3.5
 職場の人に勧められて見たが、なかなか面白い映画だった。普段だったら後述するパッケージの件もあって手に取らないだろう。

 序盤から中盤にかけて、物語の背骨の部分が説明されないまま話が進行するので疎外感を感じる。母親が死んでしまったことが弁護士にバレてはまずい!と、兄弟4人で右往左往するのだが、なぜまずいのかこちらにはわからないので緊迫感のあるシーンでも彼らだけが盛り上がっているように感じるのだ。画面内への共感が出来ないので、最後までこの映画に付き合えるだろうかと不安になる。
 ところが、全貌が明らかになってからはこれらの違和感が全て解消される。疎外感を感じるのも当たり前の話である。観客は外から、言葉通り「彼らだけの世界」を見ていたのだから。

 全体として良質なサスペンス・ミステリーであり、俳優陣の内省的な芝居も良い。どちらかと言えば小粒なストーリーだが、時系列の入れ替えなどの工夫された演出のおかげで、最後まで見どころがあった。

 文句をつけるとすれば邦題と日本語パッケージだ。ローカライズに際し、本質から外れたろくでもない邦題をつけたがるのは別に今に始まったことではないが、これも酷すぎる。

 そもそも、この強すぎる「掟」推しはなんだ。確かに中盤まで、この映画を“そういう映画”として観ることも可能だろう。おそらく制作側も想定した一種のミスリードなのだから。しかしそれはあくまでも観客側がそう読むに任せなければフェアではない。
 落とし穴は自分から踏み込むから罠なのであって、後ろから突き落とされたらたまったものではない。

 せっかくの丁寧な作りをパッケージが台無しにしている。百歩譲って日本の観客が説明的な題でなければ映画を観ないというのなら、まあ多少の事は仕方がない。観客側にも問題があるし、ビジネスだから。
 とはいえ、恣意的な拡大解釈でありもしない設定を生み出すのはいかがなものですかね。ましてやそれが制作側の工夫を潰しかねないとすれば尚更のこと。
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