イチロヲ

恋の狩人 欲望のイチロヲのレビュー・感想・評価

恋の狩人 欲望(1973年製作の映画)
4.0
全共闘時代の寂寥感を背負っている中年ルポライター(松山照夫)が、警察の摘発を受けた若い女優(田中真理)への単独取材を決行する。全共闘世代(60年代の若者)とシラケ世代(70年代の若者)の交流を描いている、日活ロマンポルノ。

警視庁の摘発を受けて、不毛な裁判が始まった時分の作品。ヒロインが警視庁の建物から姿を現して、自分語りへと流れ込む冒頭部分は、当時の田中真理が置かれていた環境をそのまま採用。心情吐露のセリフも田中自身が書いたものを採用している。

「自立と反骨」の精神は全世代に共通するものだが、その感情を日常生活の中でどのように処理していくべきか。本作では、理屈の上乗せにより主張が支離滅裂になっていく、スノッブなブルーフィルム監督(賀来恋慕)が象徴的に描かれている。

主人公のルポライターを山口監督自身の投影とする見方がたぶん正解。次世代(田中真理)にバトンを繋いでいく、60年代への鎮魂歌を思わせる作品。
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