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生きてるだけで、愛。のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
4.7
寧子(趣里)と津奈木(菅田将暉)は同棲して3年。もともと母親譲りの双極性障害つまり躁鬱病のためにメンタルに問題を抱えていた寧子は鬱状態に入り、バイトも満足に続かない。
おまけに過眠症のため、家にいても家事をするわけでもなく、敷きっぱなしの布団の上で寝てばかり。姉との電話やメールでのやり取りだけが世間との唯一のつながりだった。
一方の津奈木も、文学に夢を抱いて出版社に入ったものの、週刊誌の編集部でゴシップ記事執筆の日々。
仕事にやり甲斐を感じることもできない津奈木であったが、それでも毎日会社に通い、ほとんど家から出ることのない寧子のために弁当を買って帰る。
津奈木は寧子がどんなに理不尽な感情をぶつけても静かにやり過ごし、怒りもしなければ喧嘩にすらならない。そんな態度に寧子は不満が募るばかりだった。
だがお互いに自分の思いを言葉にして相手に伝える術は持っていない。
ある日、いつものように寧子が一人で寝ていると、部屋に津奈木の元恋人・安堂(仲里依紗)が訪ねてくる。
彼女は津奈木に未練を残しており、寧子と別れさせて彼を取り戻したいと言う。
まるで納得のいかない話であったが、寧子が津奈木から離れても生きていけるように、なぜか安堂は寧子の社会復帰と自立を手助けすることになる。
こうして寧子は安堂の紹介で、半ば強制的にカフェバーのバイトを始める。
当初は嫌がっていたものの、自分を受け入れてくれる店長の村田(田中哲司)や村田の妻の真紀(西田尚美)や同僚の梨奈(織田梨沙)店の人たちへ寧子は次第に心を開き出す。
だがある日、些細な事がきっかけで、店を飛び出してしまう寧子。
同じ頃、津奈木は入稿間際の原稿を巡って上司と言い争っていた。
思いあまって原稿のデータの入ったパソコンを投げ捨ててしまう津奈木。
津奈木と寧子は、己の思いを初めてぶつけ合う。
本谷有希子の同名小説を映画化。
感情のコントロールが上手くいかない躁鬱病である故に、己の思いを上手く相手にぶつけられず、働くことも家事も上手くいかない自分に苛立ち、津奈木に苛立ちをぶつけてしまうし、自分の思いを正直にぶつけてくれない津奈木に苛立ち苦しむ寧子の葛藤。
やりがいのない仕事に無感情になり、上手く寧子を理解出来ず表面的にしか受け止められず、知らず知らず苛立ちを溜め込んでいる津奈木の苦悩。
仕事でミスを重ねながら優しく受け入れてくれるカフェバーのマスター村田たちのおかげで、ダメな自分を変えられると希望を見出だしたけど、自分の変な部分を見抜かれて嗤われてしまうと思ってしまった寧子の絶望。やりがいのない仕事に苛立ちを募らせて爆発してしまった津奈木の苛立ち。
クライマックスで初めて寧子と津奈木は、己の思いをぶつけ合い向き合い理解し合うために、己の思いをさらけ出し合う。
「自分と相手の苛立ちやしんどさに全力で向き合い、相手の労力と同じように全力でしんどくても理解しようとして理解出来るのがほんの一瞬でも自分や相手の面倒くさい部分に疲れても、相手と真っ直ぐ向き合うことでしか、ちゃんとふたりでいられない」
そのことに気がつくふたりに淡い希望を感じ、石橋静河や田中哲司などの演技も印象的で傑作ラブストーリー映画。
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