12年ぶりに突然帰ってきた父、2人の兄弟アンドレーとイワンにとってはよく知らない他人のような存在、そして翌日には強制的に旅に連れ出される。父の仕事もわからないし旅の目的もわからない、ただパパと無理やり呼ばせ付き従う事を命じるだけの得体の知れない父親。幼い弟イワンの方はそんな父に折々反目して置いてけぼりを喰ったりと父に一片の愛情も感じない疎ましい存在に益々なって来る。父が束の間帰って来た理由、その束の間を家庭団欒に充てずに時を惜しむように理解不能な旅に息子たちを連れ出す理由、コレも特殊任務の一環と思われるような離島の見張り台で掘り出した箱の回収など解き明かされない謎の行動の数々、これらは観る人の想像に任せられる。言えないことが多すぎる中で子供に父としての痕跡を何か残そうとするが感じ取るには隔絶し過ぎている親子の距離…。ロシアの政治的状況の一断面を示しているとも取れるが…。沈みゆくボート、２度と帰らぬ父との数日間の旅からこの兄弟たちは何を学んだのかも観客に委ねられる奥深い作品でした。
