風の旅人

スティルライフオブメモリーズの風の旅人のレビュー・感想・評価

3.5
アトリエに踊りながら現れる夏生(松田リマ)と、螺旋階段をゆっくり下りてくる怜(永夏子)。
怜は春馬(安藤政信)の写真を気に入り、自分の性器を撮って欲しいと依頼する。
怜は春馬の写真を「時間がなくなったように感じた」と評する。
通常、写真は鑑賞者に被写体の時間の流れ(過去)を感じさせる。
しかし春馬の写真にはそれがなく、即物的で余計な「意味」が付与されていない。
怜は春馬の写真に根源的なものを感じ、性器の撮影を依頼したのだろう。
女性器は男性器と違い、自分では全容を見ることができない。
人間はすべてその神秘的な場所から産まれてきた。
作中の言葉にあるように、「男性は真理を求めるが、女性は自らが既に真理である」。
頻出する螺旋階段は時間をイメージさせる。
同じところを回っているようでいて、少しずつ前進している。
冒頭の動と静の対比を皮切りに、物語は生と死、男性と女性を対比させる。
女性器を出発点としながら、人間存在へとつながる。
しかし肝心の女性器の写真がぼかされていたのは残念である。
風の旅人

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