さんた

来るのさんたのネタバレレビュー・内容・結末

来る(2018年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ウォッチリストに入れていて観ていなかったものの、原作を読む機会があり読了後鑑賞。

原作は三部に分かれていて、
・田原秀樹(妻夫木聡)目線
・田原佳奈(黒木華)目線
・野崎(岡田准一)目線
という構成は映画でも踏んでいるし、降りかかる怪異に恐れ慄く大まかな流れも登場人物も大体は同じなのだけれど、映像化する上での大幅なアレンジが効いていた。

怪異"ぼぎわん"、原作ではその民俗学的な解釈やルーツがしっかりと出てくるし、恐ろしい容貌も「灰色の肌」「黒い舌」「長い髪」といったようにイメージが詳細に書かれている。
でも映画ではタイトルも原作の『ぼぎわんが、来る』ではなく『来る』になっているように、何なのかがわからない。
何なのかわからない、でも何かが来る、だから怖い、という演出。
原作では死なない人間が死んだり、怪異としてのパワーが圧倒的すぎて後半はトンデモお祓い儀式になってたりで、ジャンルとしてはホラーなんだろうけどエンタメ性が強くなっていた。

琴子(松たか子)の容姿も原作では地味なんだけど爆裂怪異に対抗するキャラクター性をつけるためのインパクトが備わっていて、原作の怖さとは違うけれどもこれはこれでホラーエンターテイメントとして面白かった。

津田(青木崇高)が魔導符を田原家に忍ばせた理由とか、それが発覚する流れとか、そういった細かいところは原作未読だとわかりづらいと思う。
野崎が家族像に嫌悪感を抱くのも、原作では無精子症なのに映画では身勝手に堕ろさせたという変更が加わっているせいで野崎に対する印象が原作を読んでいるのといないのとではかなり変わる。
香奈に対しても同じで、よりダークなキャラ付けになっていてそれが後半のトンデモお祓いとのギャップになっている。
前半の重苦しさを後半の仰々しいお祓いで払拭しているような。

良くも悪くも、どろりとした「人間が一番怖い」みたいな鬱々とした気持ちは観た後には晴れているのでお祓い効果は高いかもしれない。

逢坂セツ子(柴田理恵)、いい味出していた…。
他の人の感想だけど、心霊版シン・ゴジラは言い得て妙だなと思った。
さんた

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