このレビューはネタバレを含みます
人間の心の底に潜む闇、弱なる部分を目掛けて“あれ”はやって来る。
ホラーと銘打ちながら、
作品のテイストは至極日本的なモンスターパニックである。
しかし、その骨格には綺麗事で片付けていないリアルな人間ドラマがあった。
単なる超常・怪奇な現象ではなく、人間が人間に抱く嫉妬やトラウマ等といった黒い部分が、やがて「ぼぎわん」という怪物に繋がって行く過程が緻密に描かれていた。
ある男女の交際、結婚、新婚生活といった日常生活をこれでもかと見せつけておいて、やがて男女とその周りにいる人間達が悲惨な目に遭わされていく様子は、恐怖と共に心なしか棘のある爽快感を覚える。
まるで「他人の不幸は蜜の味」とでも言わんばかりだ。
ぼぎわんは、人間だった。
人間が、決して表には出さない感情や念といったモノが存在感を得た時に怪物になる。
喫茶店でこの文章を書いていながら、周りにいる人間達がみんな怖く見える。