Ryu

TOURISMのRyuのネタバレレビュー・内容・結末

TOURISM(2018年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ウォン・カーウァイというよりももっと複眼的な現実の切り取り方が、現代的。軽やかさの中に時々ストーカーみたいなカメラの視点が入り混じってるのが怖い。見方によっては基本ノイジーな映像の質感だと感じる人もいる気がする。

旅行に行った時の煩わしさとかガッカリ感がいちいち描かれているのが良い。(ウーバータクシー呼んで、マーライオン来てみたら意外としょぼくね、みたいな)
主人公の無知さが、観光という形でその土地の歴史とは一切無関係な軽快さを帯びてしまうし、ほとんどの場所がそんな風になってしまうのだ、と思わされる。ある意味でギャルである設定が活きている。血生臭い歴史に根ざした慰霊碑であるのにその建物は彼女にとってはすげー高い塔があって、なんとなく見栄えが良いというそれだけなのだろう。文脈は人々の中で確実に断絶していく。
後半スマホを無くし、一人になってしまってからは寄る辺なく街を歩んでゆく。とてもサスペンスフルな状況なのに街中を歩いていくうちにまた呑気さが漂いはじめる。しかし、表情の奥の不穏さと疲弊感も映し出されている。そこから現地の人に助けられた後のあの食卓のシーンのやり取りはとても良かった。
再会できた二人はすべてが変わって見えるだろう。しかしその姿は街の中に消えていく。ビビットな二人の残影だけが映画の中に残される。
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