MikiMickle

ヘレディタリー/継承のMikiMickleのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
3.8
母エレンを亡くしたミニチュア作家のアニー。
グラハム家を支配していた母とは折り合いがつかず、愛憎を抱いていた。そんな母の死を素直に悲しめないアニーだったが、それでも夫と高校生の息子ピーターと人付き合いが苦手でおばあちゃん子だった娘チャーリーと、新たに進んでいこうとする。
しかし、奇妙な出来事が家におこり… 心が通わなくなっていくグラハム一家は深い闇に包まれていく…… それぞれの思いの中、隠されたエレンの恐ろしい謎と恐怖が顕に……

監督のアリ・アスターは今作が長編デビュー作。「現代ホラーの頂点」と評されいる作品‼‼
これも映画館に行けなかった悔しい思い出……

ストーリーに関してはこれ以上言わないでおくが、まずなんと言っても、役者の演技が素晴らしい‼
夫のガブリエル・バーンの渋さと愛と葛藤。息子ピーターのアレックス・ウルフはムロツヨシに似ていて高校生には思えないけれども、免罪と苦しみと恐怖に満ちた良い演技をしていた。ムロ、頑張れ‼
娘チャーリーを演じるミリー・シャピロの顔は予告編見た時から忘れられないインパクトがあり、素晴らしい雰囲気を醸し出していた‼。「コッ コッ」
そして、母アニー役のトニ・コレットの素晴らしさたるや‼ 入り乱れる感情。悲しみと悪と苦しみと狂気的冷静さと執着と狂気。
その顔‼顔‼顔‼ 最近はニコケイ兄貴の顔〜‼とか言って笑ってたけど、それに匹敵する…いや、むしろそれを超える顔‼‼ 途中からスティーブ・ブシェミにしか見えなくなってきて、最高w 凄かった……
まず、これだけでも見る価値がある‼

で、怖いと話題の今作だったので、恐さを体感したくて部屋を完全に真っ暗にして見てたけど、正直なところ前半のトラウマ体験以降はあまり怖くはなかった。
ハエが沸くシーンも、ここはCGを使わずに本物使って欲しかった…なにがあるのか?という期待が溢れるすごく良いシーンだと思うから尚更…(そう思うと、頭ぶっとんだアルジェントやフルチはすごい)

が、それでも良い意味で背筋がぞわっとなる心理的に気持ち悪いシーンが多数あった。
トラウマ描写と、その後の苦しみや細い糸で繋がっている家族の崩壊描写も、素晴らしかった。

驚かしではないじわりじわりとくる見せ方の中でのホラー的要素の恐ろしさは前半で魅せ、
後半はまた違った意味での怖さでニヤニヤとw
途中で爆笑しちゃったw が、そこも素敵で最高♡ と、ホラーコメディ的な書き方を少ししちゃったけれど、至極真っ当なホラー映画です

前半の細かな伏線や意味のある描写もきちんと回収していて、サスペンス要素がしっかりとある。「なにが…」「なにがなんのために…」と。“Hereditary”の意味もまた。これがこの映画の本質であり、それを魅せる描写が上手く、前半から垣間見れる不穏さが繋がっていく。妄想と現実の狭間で…………
冒頭からの不穏な空気。不協和音。少しずつわかる家庭環境の不和。過去。ミニチュアの描く気味の悪さと、じわりじわりと蝕んでくる狂気と、予期せぬ展開。目に見えない深い恐怖があり、異常すぎて笑える描写があり、後に色々と考察したくなるストーリーや、忘れられなくなるトラウマ描写あり、様々なタイプのホラー好きにとってそれぞれのツボを得ている。評価の高さに納得する作品だった。

ネタバレ故に書けないが、とある事への恐怖も感じた。エンドロールで60年代ソングが流れニヤニヤしてきたのにも関わらず、「継承」の意味を違うベクトルでも考えさせられた。時代は巡るとはよく言うけれど、不安定なこの世で、当時と同じような事が起こる予兆と基盤が完全に出来ている中で(アメリカに限らず日本も)不安定な人々が繰り広げるこの話は的を得た社会風刺であるのかもしれない。 サスペンス要素がかなりあるのでネタバレ怖いし、様々な要素がありすぎて全然上手くまとめて書けなくて、ほんとごめんなさい。
私は、チャーリーの目と袖が廃れたオレンジのパーカーと彼女が作り出した造形物が1番印象に残っている。彼女こそがこの映画の象徴なのかもしれない。
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