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ヘレディタリー/継承のamのレビュー・感想・評価

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.7
マジで怖いと評判だったのでさすがに誰かと一緒に見に行こうと思っていたけど、耳に入ってくる好評価の多さに辛抱たまらず一人で観に行った。
そして映画館を出た後も上の空で帰りの電車を何度も間違える、という体験を久しぶりにした。それくらい怖かった。

あらゆる種類の恐怖が最も厭な形に研ぎ澄まされてギチギチに詰まっている、文字通り"息苦しい"ほど怖い映画。
どんなホラー映画も、大抵はやろうと思えば茶化した見方で笑い飛ばすことが出来るんだけど、この映画は笑う隙さえ与えない恐怖で終盤まで畳み掛けてくるのでただひたすら怖い。辛い。逃げ場がない。
家族の描き方について驚くほど実体験と重なるようなシーンがあって個人的なトラウマが呼び起こされた事もあり、ちょっと他のホラーとは比べものにならない程心が掻き乱された。

最後の方、ピーター後ろ!後ろ!からの鬼ごっこよーいドン!なシーンでやっと笑えた。そして母親の怖すぎるヘドバン(笑)。からの首ギコギコで最大級のトラウマを植え付けられ………

そもそも家族の置かれてる状況が最恐最悪に悲惨で救いがなくあまりにも生々しいので、最終的にサタニズムだとか非現実的な落とし所に展開していく流れは見ている側としては安堵すら覚えてしまった。
ああいう、せっかくここまで積み上げてきた恐怖を明後日の方向にぶん投げちゃうようなオチには普段は憤ってしまうんだけど、この映画に限ってはもうあれで良いです。それまでがキツすぎたので。むしろ脱力させてくれてありがとう。お陰で劇場の椅子から立ち上がれるくらいには体の硬直が解けました。

この映画が彷彿とさせるホラー映画はいろいろあるけど、奇しくも最近アニエス・ヴァルダの『幸福(しあわせ)』を観たばかりだったのでやたら青色を多用する画面作りにかなり既視感があった。『幸福』が見るからに幸せそうな家族が崩壊する話なのに対して、こちらはただでさえギリギリな家族が崩壊(というか壊滅)する話、というのが面白い。

祖母の部屋の楕円形の鏡は『リング』へのオマージュだろうか。あれも母から娘に超能力が"継承"される話だし。。

【追記】
TBSラジオで宇多丸氏が「ある有名なホラー映画のオマージュがあるがネタバレになるのでタイトルは言えない。"ホニャラのホニャラララ"としか(笑)」と言っていたのが何を指しているのか分からずモヤモヤしていたが、やっと閃いた。
『悪魔の首飾り』だね、多分。そりゃ言えないね。
あースッキリした。

【余談】
これを見てからテレビでムロツヨシを見かけるとヘイル ペイモン!って言いたくなっちゃう。
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