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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのamのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

不協和音みたいなイヤなBGMとかカメラワークとか、全体的にシャイニングっぽい空気感だなと思って見てたらボブ役の男の子も明らかにダニーを意識してるとしか思えない程そっくりだし、後から調べたらランティモス監督はかなりキューブリック好きらしい。

夫が妻・娘・息子の誰かを殺さねばならないとなった時に3人は三者三様の命乞いを始め、父親は2人の子供のどちらが優秀かを担任教師にヒアリングするという展開は「人間の本性を炙り出す」を通り越して醜悪すぎるし、あれはブラックコメディとして笑う所だったんでしょうか。そもそも娘の父親に対する懇願は、本心からの自己犠牲志願というより同情を引くためのパフォーマンスであって、命乞いの一種と読み取ったけどどうなんでしょう。
地獄のロシアンルーレットをわざとシュールに撮ってる所も含めて悪趣味の極みだが、あれって目隠ししてクルクル回ったとしても最初の位置が本人に分かってる以上は完全なランダムにはなり得ないし、あの結末は(無意識にせよ)父親の恣意が入っていたように思えてならない。父親が息子に向ける殺意という点でもシャイニングと通底しているような。

物凄く不気味で刺激的な内容なので目が離せなくて面白かったけど、あのラストを見せられたところで私は何を受け取ればいいんだ…という宙ぶらりん感があった。
後から町山解説を聞いたところ、監督は母子家庭で苦労して育ち本作のマーティンと重なる部分が多いようなので、この映画自体何かメッセージを伝えるというより監督自身の蟠りの昇華という意味合いが強いのかな。
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