MikiMickle

アンセイン ~狂気の真実~のMikiMickleのレビュー・感想・評価

3.4
君は青が似合う。どの服も似合うけど、初めて会った時に着ていた事を思い出す。君に会うまで生きている実感がなかった…… 解き放たれた。あの瞬間から僕は変わった。
君がやったんだ。

セリフだけ読めば素敵なラブストーリーの始まりかと思う。
が、しかし、映し出されるのは、ゆっくりゆっくり映し出される青く光った森…… 不穏さしかない……

ストーカーに付きまとわれた事によって、誰もいない場所に引越しをし転職したソーヤー。
しかし、それだけでは彼女の心は安心を得れなかった。男性との出会いでも拒絶反応を起こしてしまう…
相談しにいった精神科。が、そこで無理やりに入院させられてしまう事に…… 訴えても、職員も警察も無関心。
1泊だけの入院のはずが、イライラがつのり、つい職員に暴力をふるってしまった事で滞在期間が伸び……
そして、そこに職員として現れたのは、かつてのストーカーだった………

この作品は、スティーブン・ソダーバーグがiPhoneだけで撮影したサスペンスである。
ソダーバーグといえば「オーシャンズ」シリーズなどで有名な名匠だけれども、「SEXと嘘とビデオテープ」で最年少カンヌ監督賞を撮った人でもある。引退後に初ホラー作品であるこれを撮ってくれた事に感謝とともに、まず拍手を送りたい。なんか少し原点回帰を感じた。「ガールフレンド・エクスペリメンス」みたいな実験的要素もあり。で、B級臭が素敵(笑)

そして、iPhoneで撮る意味。
全編iPhone映画だと「タンジェリン」などがあるけれどそれは臨場感と独特の色合いを感じさせるものだった。
では、今作はというと、“決められた規格の中の閉塞感”というものを感じた。
狭い画面全面に押し出される息苦しさ。
その“狭さ”は、まさにこの題材に合っていて。
精神科病棟という“規則に縛られた恐怖さ”と、ストーカーによる“理想や希望のおしつけと強要”。
これが、見事に撮影方法とあっているように感じた。
かつ、息苦しい場面の合間に、不意に広い空感が現れるので、ふと落ち着いたりもする。その差がまた上手い。


そして、その息苦しさの中、どんどんと負の坩堝にはまっていくソーヤーの現状……

狂っているのは彼女なのか? 本当に精神を病んでいるのか?
それとも、彼女は正常で、ストーカー男の恐ろしい策略なのか??正直、怖くてしかたなかった。精神病院にも、ストーカーにも……
前述したようなカメラの演出もあるし、二転三転する展開にもドキドキする。

ソダーバーグというレッテルを排除してB級サスペンスとして見てもなかなかの作品でした♪あと、マット・デイモンの使い方が脇役すぎてウケるwww
MikiMickle

MikiMickle