みゅうちょび

サイレントチャイルドのみゅうちょびのレビュー・感想・評価

サイレントチャイルド(2017年製作の映画)
3.8
子供の世界を縮めてしまう親の事情と世の中の不寛容。

YouTubeで鑑賞。最近は字幕も自分でオンオフ可能になったので便利!

オスカー受賞作品なのですね。

10代の2人の子供に対して少し歳をとって見える父親と母親。そこにまだ小さな聾唖の少女リビーという家族。

リビーの教育も兼ねたシッターとしてやってきたジョアンはリビーに手話を教え始めるが、母親はリビーが手話を覚えることに反対する。

自転車で通うジョアンの姿を靄のかかった美しい自然の風景をバックに映す映像がとても印象的。

どことなく歪な家族の構成とか、リビーが言葉を発せないことで、我慢していることがまるで伝わらない母親とのすれ違いとか、自分の意志を呑み込むしかない幼いリビーの空虚な表情に胸が痛くなる。

正直あまり深く考えたことはなかったけれど、たった1人の家族のために全員が手話を覚えるとか…やはり大変だなとは思う。
特に本作の中で、母親は仕事に追われていてとてもじゃないが手話なんて覚えられないというのが本音かなと思った。
家族だけでなく、リビーが普通の学校に通う為には、どうしても周囲の理解者が必要だし…

母親がリビーに手話よりも読唇術を習わせたいのは、ひとつは誰が見ても明らかに障がい者に見えてしまうことを避けたいのか、聾唖者の世界だけで生きていかなければならない娘の将来を案じているのか…彼女の気持ちが全く分からない訳でもないけれど、決してリビーに寄り添っていないのははっきりしてるんだよね。

母親である彼女自信が心に欠陥を抱えてるとしか思えない。彼女にはきっと人の声は聴こえていない。彼女こそ聾唖なんではないだろうか。

ジョアンと言う存在から家族の中の誰でも(例えば、お兄ちゃんには希望が持てそう)少なからず手話の有効性を理解してリビーに寄り添う気持ちを育んでくれたらと願う。

聾唖の方は、大衆の中で手話で話したりしていれば分かるけれど、存在を確認しずらいから困っていても分からないかも。

手話を多言語の中の一つとしてより多くの人が学ぶ選択肢になるような工夫が必要なのかも。

とても力強くテーマが伝わってきた。
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