Monsieurおむすび

希望の灯りのMonsieurおむすびのネタバレレビュー・内容・結末

希望の灯り(2018年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

ドイツ映画祭2019にて。

世界から取り残された巨大スーパーという小宇宙に放り出された孤独を纏うなにもない人々が構築する、慎ましくも「自他」肯定に満ちた人間模様の温かさ。

「美しき青きドナウ」の旋律で始まるプロローグの心地良さは滑らかなワルツを思わせる。
個性豊かなスーパーの従業員が保つ、お互いの距離感も不均一なのに配慮は欠かさずで、あぁ、彼らは自分の存在感を示しながら他人のパートは決して踊りはしない優しい関係なのだなと目を細めた。

全貌を把握するには巨大過ぎるスーパーはまるで迷路の様で、そこかしこで重ねる逢瀬はクリスティアンとマリオンの距離を縮めても、愛しい人の影や秘密を感じさせる。
単純労働をこなすだけの退屈に思える燻んだ日常が、薄っすらと色めき立つ瞬間があれば、独りの夜も夢想に溢れ、彼らが迎えるどんな朝も待ち遠しいはず。

浮遊と潜水を繰り返す、自分の歩く足元すら覚束ない人生の中でも、決して失われない輝きを垣間見た気分にさせてくれる。

落ち着いたトーンの色彩と寂寥感を紛らわす音楽が似合う優美な人物達。陽の当たらない彼らから滲む密やかな灯りが私の心を
仄かに照らす。
この映画大好きだわ。
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