なちゅん

ウトヤ島、7月22日のなちゅんのレビュー・感想・評価

ウトヤ島、7月22日(2018年製作の映画)
3.8
恐ろしかった。
入り込んでしまうのが怖くて、制作意図に反するだろうと思いながらも、このウトヤ島テロについて調べながら見たのだけど、それでも怖かった。

相手がどういう思想で、どういう理由で、どんな武器で、何を目的に、何をしているのかすらわからない中で逃げ惑い、息を潜め、隠れ続ける恐怖。次の瞬間殺されるのは自分かもしれないと徐々にリアリティを持って感じ始める恐怖。
被害者と同じ立場で逃げる視点に立った72分の長回しはかなり効果的だったと思う。このテロも何も知らない人に、何も知らせずに見せたらトラウマになるんじゃないかってくらい、鬼気迫る映像になっている。

見ている側は72分で終わることが分かっているけれど、彼らは知らない。このまま永遠にこの恐怖が続くんじゃないかと絶望を味わっている。
大事なのはこれを見て同じように怯えることよりも、この経験を実際にして、この絶望を感じた人がいるということをリアルに感じることなんじゃないだろうか。
そしてそれを決して忘れないことも。

「わかりっこない。分かりっこないから、最後まで聞いて。」
なちゅん

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