粉雪

シシリアン・ゴースト・ストーリーの粉雪のレビュー・感想・評価

3.3
いやー、なんというか、うん…。
パンフレットにある言葉通りの映画ではあった。
1993年、シチリアで実際に起きた誘拐事件から紡いだ少年少女の美しくも切ない幻想的なラブストーリー…。
過酷な現実と幻想の融合。素晴らしかった。引き込まれた。
ゴーストの意味もわかった。
が、しかし…。
どうしても私には過酷な現実の方が勝って、最後に鉛を飲まされたような気分になってしまった。
実際にあった事件だからかな。
実話に基づくストーリーはどうもハマりにくい。

実は、この事件が起こった頃、正確には調べないと分からないが92年から95年までの間、シチリアに旅行したことがある。
私が覚えているシチリアは、パレルモの喧騒、カタコンベの腐らない少女のミイラ、パレルモ郊外のホテルのやたら目付きの鋭い従業員、小さな港町の海の美しさ、料理の美味しさ、のどかな街並み、オリーブの木。
そのどれも、この映画には出てこない。
サルデーニャ島に比べたらシチリアは大丈夫と知人に言われたその頃起きていた事件と思うと、地元の人にしか分からない闇があるのだと思い知らされた。
その闇をそのまま伝えるのではなく、ファンタジーに包んだのは良かったと思う。
粉雪

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