109mania

教誨師の109maniaのレビュー・感想・評価

教誨師(2018年製作の映画)
3.0
 色々な見方ができる作品だ。2つの名作映画と一つの小説(映画化されているが見てはいない)を思い起こした。
 一つは「沈黙」。BGMをほぼ排除している点は、演出面での共通点。効果的であった事は間違いない。また、赦しを求める者がいるからこそ聖職者が聖職者として生かされるということを強く感じた点も共通項といえる。
 死刑執行を突きつけられる受刑者といえば「私は貝になりたい」の中居正広を思い出さずにはいられないが、この映画の俳優さんもなかなか凄まじい演技を見せてくれた。
 敢えて映画は見ていない小説「真幸くあらば」も教誨師、キリスト者が登場する名作だ。死刑囚と、死刑囚に寄り添おうとする者との対話は、方法や頻度や状況など様々な面で制約がある。だからこそSNSで「つながる」今ふうのコミュニケーションとは対局的にある濃さを感じさせる。その密度はとても大切にすべきもののように思った。
 教誨師が、自分の弱さや恐怖心を排除して高宮と向き合うシーン、また高宮もそうは見えないけど教誨師にすがる心情を持っていることがわかるシーンは、なかなか見どころだ。そしてグラビア写真に書き留められる聖書の一節を目にするシーンは、主人公の心情に思いを馳せる大切なシーンだ。
 大杉漣さんの遺作。しっかり受け止められたか自信はないけど、見てよかった。
109mania

109mania