柏エシディシ

クレアのカメラの柏エシディシのレビュー・感想・評価

クレアのカメラ(2017年製作の映画)
3.0
2016年カンヌ映画祭の合間にわずか9日間でサクッと撮った気軽さがホン・サンスのお茶目さを際立たせているというか、その軽やかさが可愛い小品。

パリから来た音楽教師演じるイザベル・ユペールとキム・ミニ、ホン・サンスの分身たるチョン・ジニョン(「夜の〜」の映画監督よりルックス的にはホン・サンスに近くてより可笑しみが増す)の交歓が愉しい。女社長をも交えた女の本音と建前が垣間見えるやり取りも可笑しく。

「それから」や「夜の〜」にあったある種の苦味というか塩味は控えめかな。
それでも、クレアのカメラが「写真に撮られると人は変わる」と言説しているのは、まさしく映画の事をインスパイアしている訳で。そうすると、実は現実を反映していると思っていたホン・サンスとキム・ミニのコラボレーションの連作こそが、要は映画の方こそが、ふたりの現実の関係に影響と変化を及ぼしていると示唆しているようでその捻りというか視点の転換には唸らされた。

あと、クレアの亡くなった恋人は「夜の〜」に出て来た子供のためのピアノ曲を作っていた彼なのかなぁ、とか。彼はハンブルクだけれど。
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