KnightsofOdessa

ミスター・サルドニクスのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ミスター・サルドニクス(1961年製作の映画)
3.5
[あなたは慈悲を与えるか?与えないか?] 70点

したり顔のおじさんが夜のロンドン橋で葉巻を吸いながらカメラに話しかけている。リー・J・コッブみたいな面倒くさいおっさんの雰囲気だが、彼こそが監督ウィリアム・キャッスルだと自己紹介し、映画楽しんでね!と声をかける(何しに来たんだ)。ここからも分かる通り、本作品は中々ツッコミ甲斐のある物語が展開される。サルドニクスという男爵の妻となった元カノのモードから連絡を受けたロンドンの優秀な外科医ロバートは中欧ゴルスラヴァへと旅立つ。城ではいきなり顔中に蛭をくっつけられたメイドに出会い、その後に現れたサルドニクス男爵はスケキヨばりのマスクを付けていて、しかもそのマスクの下は現代版『笑ふ男』といった具合の歯がむき出しになった強烈な笑顔で、更にその笑顔になった過程が衝撃的にダサい。んなわけあるかい、という荒唐無稽な設定が並んでいるわけだが、怪しい城主と怪しい執事のいる古城から"囚われの美女"を救出するという基本はしっかり押さえているので中々面白い。特にサルドニクスの素顔が初めて登場するシーンやモードがサルドニクス義父の顔を見るシーンの暗闇→登場の流れは好き。
本作品の面白いとこは、衝撃的なサルドニクスの顔を要所以外で隠すところだろう。これによって後半は"あの仮面の下にはあの顔があるのか"という妙な緊張感が生まれると共に、義父の死体がドーンと出てくる"笑顔"の天丼展開が薄まらないのだ。

"ギミックの帝王"ウィリアム・キャッスルが用意した今回のギミックは"パニッシュメント・ポール"という観客にサルドニクスの運命を決めさせる投票みたいなものである。事前にYouTubeの評価ボタンみたな厚紙が配られたらしく、観客はそれを掲げて投票するらしい。ラスト5分で再びキャッスルが登場し、観客の挙げているであろう札を嬉しそうに数えていく。そちらのお嬢さん、もうちょっと高く挙げて。そっちのお兄さん、見えませんね。そして…
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