KnightsofOdessa

オッペンハイマーのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
[光の二重性と人間の二重性] 80点

クリストファー・ノーラン長編12作目。ノーランにコロナ禍直後に劇場公開を強く希望されたことで20年来の蜜月を切ったワーナーも、手放した瞬間にオスカー席巻されるとは思ってなかっただろう。物語はオッペンハイマーの半生を三つの視点で描いている。基本的には時系列順なので見やすい構成ではあるが、回想とオッペンハイマーの聴聞会とストローズの公聴会が入り乱れ、それぞれがちゃんと説明くさいので、全体的には答え合わせみたいな映画という印象を受けた。ただ、大学時代に量子物理を習った固有名詞好きとしては大量の量子物理の固有名詞に囲まれて満足感があった。ファインマンは元気にボンゴを叩いてたし、ジョシュ・ハートネットはアーネスト・ローレンスそっくりだし、こんだけの人間を俳優で覚えさせようとしてるだろってくらい端役まで贅沢なのは好感すら持てる(娼婦か聖女しかいないという女性表象は相変わらず終わってるが)。結局のところ、物語としては"光は粒子性と波動性がある"にちなんだ"オッピーには科学者性と人間性がある"ということだろう。実に『イミテーション・ゲーム』っぽい。原子や星の研究をしていた理論物理学者ということで、『2001年宇宙の旅』における神との遭遇に近い形で粒子がフィーチャーされ、雨や砂塵や火の粉や玉ボケといった形で現実世界にも可視化されているのは良かった。じゃあ波動性は…?あったっけ?IMAXで観たけど、"画面が縦にも長いので塔を撮ってみました"というくらい情報量は薄いので、ラドゥ・ジュデとかにIMAXカメラを渡したくなるな。切り出しじゃなくてIMAXカメラで撮ったら深度浅すぎて周辺に情報を置けないだけとは思うが。あと、終り方がとてもノーランっぽくて草でした(その頃にはローレンスは死んでるはずですが…)。
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