KnightsofOdessa

メゾン ある娼館の記憶のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

メゾン ある娼館の記憶(2011年製作の映画)
3.5
["私たちが燃えなきゃ夜は暗闇だ"] 70点

2011年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。ベルトラン・ボネロ長編五作目。19世紀末フランスの高級娼館を舞台に、そこで暮らす娼婦たちの日常と仕事風景、やって来る男たちを描いた一作。まず目を引くのは"2階"つまり仕事部屋の異様な暗さだ。人物には照明が当たってるのに部屋の壁は真っ暗という舞台的照明は、ある意味で世界が壁に届く前に終わっているというアドルフォ・アリエッタ『炎』みたいな世界観にも見える。女主人か客がいないと外出すら出来ない彼女たちは外世界の情報を男たちから断片的に仕入れることしか出来ないため(ドレフュス事件の話が出てくる)、その感覚は正しいのだろう。外世界の情報をもたらす男たちは、病気/肉体的暴力/フェティシズムを通して彼女たちを傷付け、尊厳を丁寧に一枚ずつ剥いでいく。加えて、女性陣は勿論のこと、娼館に通い詰めている男性陣もセックスを楽しんでいる様子はなく、エロティックさすら感じ得ない。唯一希望があるとすれば、それは最後に残された彼女たちの繋がり合いか。
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