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チワワちゃんのnatsuのレビュー・感想・評価

チワワちゃん(2018年製作の映画)
3.2
観終わってから、ずっとチワワちゃんへ思いを馳せてしまう。

スクリーン越しでしか会ったことないのに、もうずっと前から知り合いだったような気がして、会いたい、行かないで、と思ってしまう。

けっきょく人間ひとりの存在ってすごく危うくてあやふやで、あれだけ明るく周りを巻き込んで独特な魔力を持ったチワワちゃんですらも、誰かの人生を決定的に変える、なんてことはなくて。特に、成田凌演じる吉田くんが、あれだけハメをはずしたことをしておきながらその時期になったらしっかり就活してレールに乗ってるあたりとか、あああれだけ愛したチワワちゃんは彼にとって人生のほんの一部でしかなくて、もう過去なんだなあと思った。(とは言え、麦ちゃんを襲ったあとの表情は、チワワちゃんのことを必死で切り離して自分の人生にもう残っていないフリをしていたのかなという気もした。)

チワワちゃんって、チワワちゃん本人が求められてたというよりは、チワワちゃんといるときにそれぞれが得ることのできる「私」や「俺」を求められていたのかなあと。自分がいつもよりキラキラしてる場所にいるように見えたり、逆に比べてちっぽけなものに思えたり、状況によってくるくる変わる手放したくないオモチャの鏡のような存在だったのかなと感じた。

きっと、そのことにチワワちゃんも薄々気付いていた。彼女の死後に色々な一面が見えてくるのは、彼女が隠してたんじゃなくて、周りが見ていたチワワちゃん像があまりにも綺麗で美しすぎたのだと思う。

人間誰だってみんなちょっとずつ汚くて残酷で醜くて儚くて、そして物凄く美しい。

人と人との繋がりに絶対なんてなくて、だからこそ抱きしめたくなってしまう、そんなリアルが描かれた作品だなと思った。

あと、全体的に音の描き方が印象的な作品だった。そして玉城ティナちゃんとチワワちゃんのシーンがそれはもう美しすぎて美しすぎて、この2人の物語だけで2時間観ていられるんじゃないかと思うほどだった。
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