蛇らい

騙し絵の牙の蛇らいのレビュー・感想・評価

騙し絵の牙(2021年製作の映画)
2.6
あえてこちらの予測するタイミングから外したカッティングが、映画全体の小気味良さを演出している。さらに追い討ちをかけるような変拍子の劇伴が、キャラクターの交錯する心理を表現しているかのように感じた。

出版社の編集者という題材を扱った作品があまり浮かばないため、パブリックイメージと一般的な興味が薄れる可能性は充分にあった。しかし、演出の妙とも受け取れるダイナミズムを端々から感じ、弱点にもなりうる設定をブラッシュアップし昇華できている。

一級の役者たちが織りなす、文句のない演技が交錯する様に見惚れる反面、やはり、登場する役者の多さが消化不良を起こしている。単純に記号的であると同時に、こういうタイプの人がこういう所にいて、こういうことをするよね、という押し付けがましさは否めない。

それらの違和感はキャラクターだけに留まらず、設定としての出版社と出版物にまで及ぶ。バックグラウンドの作り込みに欠け、主題となる出版物の文脈などからキャラクターの是非のジャッジが困難である。

はっきりと既存の出版物を模しているくらいの設定の提示があれば、物語への没入感が開けたのではないかという点で残念な作品だ。
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