皿と箸

旅のおわり世界のはじまりの皿と箸のネタバレレビュー・内容・結末

旅のおわり世界のはじまり(2019年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

「旅の終わり、世界の始まり」
というタイトルで表そうとしているのは、
おそらく「洗礼」という事なのかな。

だとすると洗礼とは深く水に沈める事で、
一度死んで生まれ変わるという事らしい。

本作は主人公のヨーコが旅を通じて様々な艱難辛苦を味わうが、最終的に自らが拒絶していた異国の人達から救われる経験を通じて、あくまで自身が現実だと感じている事は単なる自意識に過ぎないという事に気づき生まれ変わるプロセスが描かれる。

また一方で、日本の撮影クルーとウズベキスタンの人々を対比し、違う文化や習慣から見返したときに、いかに日本人側が横柄で傲慢、差別的で非人道的なのかを延々と描いていく。

日常は想定内に満たされていて退屈なので、つい気づくと知らない間に劣化が進んでしまう。
特に日本の様に特定の宗教や生活習慣を持たない民族は自身の生活を見返す物差しを持っていないので、旅がその代替品として機能する様を描いていく。

自分も異国への旅をした際に、おそらく単なる日常の風景に過ぎなかったり、歓迎や親切心を表そうとしているだけなのに、逆にとてつもない不安感を与えられた経験があるけど、そんなあくまで自意識の変容で世界はいくらでも変わり得るという事を画面で表現するのが黒澤清監督は本当に上手いですね。
何気ない建物や、光の加減、人や物の動きで不安感を煽ってきます。

余談ではありますが、
日本人って「外国人」という言葉が表す様に、内と外って概念で世界を捉えているから国際比較するの苦手ですよね。
日本がこの数十年間で社会、経済指標をどれだけ劣化させてきたかや、コロナ対策等を見ても国際的に全く見込みがない状態になってしまっているという事は国際的に目を向ける事で気づくきっかけになると思います。
皿と箸

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