フジタジュンコ

チコと鮫のフジタジュンコのネタバレレビュー・内容・結末

チコと鮫(1962年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

まだサメが人類の敵として描かれなかった頃の、童話のようにやさしく、美しい物語。サメのマニドゥがかわいすぎて、チコとマニドゥが泳ぐ姿が爽快で、私も海に入りたいと思わされたのは初めて。

タヒチの情景がとにかく素晴らしい。自然にあふれたタヒチも否応なく文明化していく中で、変わらないままでしか生きていけないチコとマニドゥの姿が物悲しくもある。人類は進歩を目指していくし、それ自体は素晴らしいとは思うのだが、こうやって失われる美しいものもある。
この作品が感動的なのは、そういう文明社会をただ批判しているわけではなく、人や社会が変わることは止めようがないことを受け入れたうえで、ゆっくりとしたストーリーテリングの中でただただ静かに自然の一部であるチコとサメを描いているからだ。強いメッセージによる押しつけなどなく、美しいありさまだけを提示する。
ラストでチコたちは海の中に消えるが、彼らがどこかで生きていてほしい、と願ってしまう。

DVDで入手できたのはありがたいのですが、画質が荒くて残念。ただ古い映画の味わい深さと考えればこれはこれでいいのかな。とはいえいつかリマスターされたものを劇場の大スクリーンといい音響で見たい。