風来坊

毒戦 BELIEVERの風来坊のレビュー・感想・評価

毒戦 BELIEVER(2017年製作の映画)
3.5
香港ノワールの巨匠ジョニー・トー監督の2012年の映画「ドラッグ・ウォー 毒戦」の韓国リメイク。
リメイクなので全体のプロットは同じですが、細かい部分はだいぶオリジナルより変わっていて別物として観た方が良いのかも知れません。

オリジナルは死刑を逃れる為に仲間を売る事も辞さない生に執着する男と、薬物犯罪撲滅に執念をを燃やす刑事の男との互いの執念がぶつかり合い、そこにジョニー・トー節とも言える熱く乾いた銃撃戦で魅せるバイオレンスアクション映画でした。

本作はまず男2人がオリジナルとは違い歳が離れた設定になっていて、副題にもある通り執念や思惑のぶつかり合いというより信じるか信じられるかどうかをメインにしているような感じ。
オリジナルにはない「イ先生」という正体不明の黒幕の存在が「ユージュアルサスペクツ」のカイザーソゼみたいな感じで、どちらかというとサスペンス色が強い内容になっていました。

潜入捜査で色んな人物になりすまして、組織の人間との騙し合いもハラハラドキドキ。こちらはどちらかというと刑事の活躍の方を主体に描いていますね。オリジナルも冒頭はインパクトがあったが、こちらもインパクトでは負けていませんでした。

青年役の人は何処かで見たなと思ったら最近観た「スピードスクワッド」で若い警官役を好演してたリュ・ジョンヨルさんでした。
本作では感情を抑えた冷たい目の演技が印象的。

中国の麻薬のバイヤーカップルのイカれ具合が話を、一筋縄ではいかない感じに盛り上げる。男の方のハリムを演じたキム・ジョヒョクさんは交通事故で亡くなってこの作品が遺作だそうです…。
危険な匂いをプンプン漂わせたハリム役を好演していて、演技が非常に上手い人のので残念ですね…。

演出は多少違うが氷風呂のシーンは毒戦を象徴するシーンなのでちゃんとあって良かった。
こちらも激しい銃撃戦があってオリジナルへのリスペクトを感じるが、迫力とカタルシスではやはりオリジナルには敵わないと個人的には感じました。

韓国映画特有の暗さを入れて良いアレンジの作品になっているとは思いますが、やっぱり私はオリジナルの方が好みですね。
折角サスペンスに比重を置いているのに、イ先生が誰かは安易に想像が付くし変に独自性を出し過ぎた気がします。

終着点もきっと好みが分かれると思います。
韓国映画らしいとは思うけれども私はあまり好きじゃなかったです。
それでも聾唖の兄妹などオリジナルのツボはしっかり抑えていながら、独自性もありリメイクとしてなかなかの作品と思います。

まとめの一言
「ミスリードさせるには無理がある」
風来坊

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