マリア・カラス本人の映像のみで構成されている本作。
画面越しでもこれだけ引き込まれてしまうのだから、当時彼女の生歌を聴くためにチケットを求め徹夜で並ぶ聴衆が後をたたなかったのにも頷ける。
「天才」として人々に求められ、愛される一方で、たった一人 目の前の最愛の人から
一人の女性として愛されることを切望し、叶わなかったカラス。
ゴージャスで煌びやかな世界観の中、
時に残酷な悲哀を歌うオペラとカラス自身の人生が重なる。
才能に見出され、才能に愛され、
それと同じだけ才能に責め立てられ、才能に苛まれたカラスの、孤高の美しさと、
それとは相反してどうしようもなく溢れ出す人間臭さこそが、彼女を苦しめた要因であると同時に彼女の最大の魅力であると感じた。