佳香かこ

ヤクザと家族 The Familyの佳香かこのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.0
初めて「家族」を教えてくれた存在が
いざ自分が「家族」を持とうとしたときに、突如邪魔な存在になる皮肉、

どの業界よりも人一倍「義理人情」に熱い男たちが、時代に翻弄されながら
時代の変化に負けていく様が切なかった。

舘ひろし扮する柴咲が言った
「ヤクザしかやれない奴らの居場所に
」という言葉が胸を刺す。

少し話は飛躍するも、今はAV業界も
凄まじく顔面偏差値が上がり、
他を圧倒するような学歴や職歴まで持ち合わせていないと全く稼げない世界に。

「脱ぐ」をすれば稼げる、最後のライフラインという時代は終わった。
(作家・鈴木涼美さんの大ファンなので
この業界の知識にいつの間にやら詳しくなっていた)

本来それにすがるしかない人たちの席を、持てる者が奪っていってしまっている。

世知辛い「受け皿」なき世の中。

何もかもをクリーンに!という気運の高まりの裏で、こぼれ落ちてしまう人たちの必死の足掻きややるせなさが
沢山詰まっていた。

そんな世界が掲げる「正しさ」の軽薄さ、狭量さ、息苦しさのしっぺ返しは
既に始まっている気がする。

SNSで勝手な正義を振りかざす自粛警察たち、
少しでもスキャンダルが出たら
立ち直れないほどフルボッコにするマスコミ、
「失敗」や「はみ出しもの」に不寛容で
誰もがちょっとでもルールから逸脱することを必要以上に恐れる世の中。
つまんね。

そんなことを思いながら、
綾野剛は言うまでもなくハマり役で
3時代の変化感を誰より体現していたし

舘ひろしみたいな誇り高き人が長だからこそ
そんな人が率いる組の衰退がより一層切なく立ち行かなくなるし、

磯村勇斗は"冷めた部分”と“内に秘めたる熱さ”の共存が絶妙で、
あんな大御所たちを前に相当なインパクトを残していた。

綾野剛の何とも言えない「覗き込むような目」はこれまで沢山見てきて
問いかけられてきたけれど

本作ラストシーンの「覗き込むような目」が特に印象的。
その目で何を覗き込んだんだろう。

パンフレットもじっくり読み返して、
思い返したい。
佳香かこ

佳香かこ