ムラサキシャチホコ

LETO -レト-のムラサキシャチホコのレビュー・感想・評価

LETO -レト-(2018年製作の映画)
3.6
予想を覆して地味。何事も統制されるソ連の日常に、僕らが慣れ親しんだロックンロールはない。音楽で腰を捻って自然にからだが動くあの熱狂もない。日常の出来事を淡々と歌い、時折熱狂的な非日常への反転を夢想する。それって僕らの日常にもあることだよな。頭の中で夢想しても結局それだけ。日常は変わりなく淡々と進んでいく。フィクションを操る謎の男の登場と共に始まるこの夢想空間がロックの名曲とともに描かれててそこがど偉くカッコいい。急に煌びやかに輝くあの瞬間が、全編を貫く極めて地味な日常とモノクロの中突如現れる感じがとても印象的。
髪型やファッションを派手にしても最後まで地味に日常を歌い上げたラストライブには拍手を送りたい。
ビートルズのペニーレインやマーサマイディア、キンクスのオータムオルマナックとかポールマッカートニーのアナザーデイとか地味な日常を歌い上げた名曲はたくさんあるんだぜ。実はそんな名曲の方が自分の好みだったりするんだぜ。
(ロックで1発あてて)古城で暮らしたかったという旦那に対して、実は警備員の給料で慎ましくコーヒーを飲むこの暮らしで満足よみたいなこと言ってる奥様のセリフの場面がこの映画の中で1番良かったような気がする。それでもやっぱりうちに帰ったらイギーポップやTレックスやボウイ、トーキングヘッズ、ベルベットアンダーグラウンドとか非日常の方をちゃんと復習してしまうのであった。