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幸福なラザロのKKMXのレビュー・感想・評価

幸福なラザロ(2018年製作の映画)
1.5
 本作も『愛がなんだ』と並び、フォロイー様方の評価が高めの一作です。タイトル的にも上映劇場的にも好みなので、これは絶対ハマるぞ、と直観し鑑賞しました。

 しかし…直観は外れました!正直、よくわからなくて、ピンともこないし、グッともきませんでした。う〜む…

 とはいえ、物語の展開は結構面白く、鑑賞中に飽きることはなかったので、エンタメとして楽しむことはできました。特に前半はなかなか良いです。割とビックリな背景があり興味深いですし、映像的にも美しいです。ヒールである侯爵夫人の搾取に関する発言はなんとも含蓄があります。
 そして、空に放り出されるような後半〜終盤の展開から、鑑賞後もモヤモヤ考えることができ、そういう意味でもたっぷり味わえる作品だと思います。前半と後半のつなぎで語られる、年老いた狼と聖人の話は、理解こそが断絶をつないでいくという寓意が込められているようにも思え、感慨深いです。
 しかし、モヤモヤ考えた挙句、あまり好みじゃなかったなぁ、と身も蓋もない結論に至った次第です。


【本作ピンとこないポイント】

①ラザロに興味がない
 風貌も含めたラザロのキャラが本作を引っ張っていると思いますし、彼の無垢さ・純粋さは聖性・善性を投影しやすいと感じます。しかし、私はそういう聖人感に関心がないため、どうもラザロは空気っぽく感じました。主人公に無関心なのでハマれないのも致し方ないです。
 ただ、ラザロとタンクレディの関係は良かったです!ほぼ我欲ゼロのラザロですが、タンクレディとの関係だけは欲望していました。そこに唯一、人間的な臭みを感じました。ラザロは孤独だったから、彼と兄弟になれたのは嬉しかったのでしょう。最後の展開もタンクレディを思うが故ですしね。

②なんか悲観的
 ああいうオチにしたのはよくわかんないですね。村人たちは前半は侯爵夫人に搾取され、後半は資本主義に搾取されます。独裁国家が崩壊して自由になったと思いきや、スキルがないので生き残れず、より困窮して不幸になるというパターンのメタファーなのかな、と感じました。
 その構造の中でのあのオチは、希望がなさすぎではないかと思った次第です。

③後半が雑
 前半は面白かったのですが、私には後半の展開や描写が雑に感じました。後半こそがメインなはずなのに、緻密さや丁寧さが失われたように思います。ラザロのキャラ頼みというか。老醜を晒したタンクレディの行動原理はよくわからないし、教会の奇跡も取って付けたように感じました。ラストは野島伸司みたいだな、との印象です。


 しかしながら、このようにあーだこーだと考察できるのは良いガーエーの証拠だと思います。私とは単に合わなかっただけで、評価されるのと宜なるかな、といった逸品だと感じています。


【2022年追記】
 観た直後は合わないな、程度の感想であったが、『ブラザー・サン・シスター・ムーン』を観て本作のダメさを思い知った。ラザロの純粋さはファンタジーでしかない。ラザロには苦悩がない。苦悩なき純粋は嘘だ。改めて本作は駄作だと断言する。そのためスコアを3.0から1.5に大幅に下げる。
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