パブリコフスキ監督の映画はとにかく無駄がない。寡黙でシンプルで、それでいて最大限に情感を伝えることができている。情感だけでなく鑑賞後の余韻まできちんと残してくれている。作品がモノクロであるにも関わらず、その色味の鮮やかさや落ち着きまでも見てみたいと思わせるような質感もちゃんとあるところも見事。
第二次大戦は数多のドラマを生み、その後の冷戦時代も引き続き人々に災禍をもたらした。
本作は、密告社会の中、堂々と愛を貫けない当時の全ての恋人たちに送るレクイエムと言えよう。
物語が切なければ切ないほど恋人たちは光り輝いていく。
主演のヨアンナ・クーリグは『夜明けの祈り』の彼女ですね。スラブ系の美しさと冷徹さと、意志の強さが感じられ、それでいてミステリアスな役もこなせるいい女優です。
