蛇らい

ブラック・クランズマンの蛇らいのレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
3.6
観た後に確実に爪痕を残してくる作品。そういう意味では監督の思惑どおり、作品が狙ったところで機能している証拠だと思う。しかし、そこに至るまでのプロセスが個人的にどうなの?と思ってしまった。

物語の内容としては、実話をベースに起承転結の解りやすい展開でとてもおもしろくユーモラスにまとめられていて楽しめたし、人種差別に対するスパイク・リーの見解をしっかりと受け止められた。しかし、最後に挿し込まれた映像で中途半端な作品になってしまった印象だ。

映画の手法として反則なんてものはひとつもないのだけれど、じゃあ最初からマイケル・ムーアみたいなドキュメンタリーを作ればいいじゃないかと思ってしまう。人種差別に対する監督の危機感や我慢の限界がきているのは解る。しかし、あの映像パートがあることで、脚色された作品の中から観客が監督の思いを受け取ろうして模索したそれまでの時間はなんだったのかとポカンとしてまう。

もうひとつ、絶望的にキャラクターに魅力がない。主人公もハチャメチャな奴なのか真面目な奴なのか劇中いったり来たりしすぎてどっちつかずだし、アダム・ドライバーの役どころも性格的に無色透明に近い。キャラクターに思い入れが持てないときつくなってくる。もう少し凸凹コンビみたいなオーソドックスなバディものならば笑える瞬間も増えていたかもしれない。

劇中、あくまでフィクションの中で大暴れして欲しかった。その制限された中での監督の技量や観客をどん底に叩き落とすようなアプローチがあって欲しかったなと思う。
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