hajime363

ブラック・クランズマンのhajime363のレビュー・感想・評価

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
-
「暴力は愛ではなく憎しみを糧とし、
対話ではなく、独白しか存在しない社会を生む」DO THE RIGHT THING より

(社会的、歴史的背景から失われてしまった)自己肯定感の欠如により、他者に対する憎しみが生まれ、(自己肯定感を高めるための)独白が憎しみを増長し暴力を生む、
という構造の提示がスパイクリー監督作品に共通して見受けられると解釈しています。

◆独白
閉じられたコミュニティ、とりわけ価値観を共通項として集まった集団の会話は“対話ではなく独白”に近い。
KKKメンバーとロン(黒人警官)が電話するシーンが象徴的。
差別的発言をすれば黒人警官であってもKKKのメンバーになれるというユーモラスな展開として描かれるが、求めている返答(差別的発言)のみを受容する会話が独白的な意味合いを帯びており憎しみを増長している。

◆3つのコミュニティ
1つは前述のKKKに見られる閉じたコミュニティ。もちろん否定的に描かれる。

2つ目は黒人学生理事会。
※対話は会長とロンの間でのみ描かれるが、便宜的に理事会をコミュニティとして挙げる
ロンという異なる価値観を聞き入れつつも、状況や立場から相容れないという「わかってはいるけども…」なやつ。
ドラマの展開を加味しても「言わんこっちゃない」な訳なので“肯定はしない”くらいの温度間でしょうか?笑

3つ目は警察。
上記両団体から“pigs”と呼ばれ忌み嫌われる存在であるが、本作では一番肯定的に描かれていた。
治安の維持という共通目標あるいは、仕事としての割り切りなのか人種というテーマに関して価値観が柔軟である。
一部、モラルの欠如した警官やロンに対する署長の指示に差別的なニュアンスがあえて描かれるが、
前者は勧善懲悪的な展開でキチンと回収されるし、後者に関しても「黒人うんぬんの前に新人警官だしね」という前置きで理解が出来る。

そして、ネタバレしないように言葉を選びますが、“独白による憎しみの増長を笑い飛ばす”という力強いメッセージが本作を象徴していると感じました。
hajime363

hajime363