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存在のない子供たちのslvのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.6
とてもつらくて観ていてしんどいんだけれど、ゼインというシリア難民の少年の演技力の凄みにどうしようもなく引き込まれ、心を揺さぶられる。

現代の話とは思えないような過酷な環境、地獄のような生活を、まるでドキュメンタリーのようなリアルさで描いたこの作品に、絶望ではなく一筋の希望や救いが感じられるのは、ゼインの生き抜く力の逞しさ、そしてたとえ自分の親であろうとも絶対に大人に屈しようとしない芯の強さがあるからだろう。

とても演技とは思えないほどの気迫と説得力。
だけど、本当に子供らしくお茶目な可愛らしさもあるところにホッとする。

このゼインを演じた少年をはじめ、すべての出演者たちの演技の自然さは奇跡のようだった。
本当に、彼らの生活そのままの姿を見せられているかのように感じた。

そして、ゼインが大人たちへ投げ掛ける言葉の一つ一つが、鋭く突き刺さるような重みを持って響いた。

特に、ゼインが母親へ放った「心がないのか」という一言。

衝撃だった。
グサリと胸を突かれてしまった。子供に、こんなことを言わせてしまう親って…。

難民、貧困、児童虐待、差別、格差社会…などなど、様々な問題や現代社会の闇を題材として描かれた作品であるけれど、とりわけ「親の責任」を問うと意味に於いては、身近にもある問題として昨今の虐待のニュースなどと重ね合わせて考えてしまい、胸が苦しくなった。

この題材をフィクションとして仕上げ、このような傑作を生み出した監督の手腕は本当に見事だと思う。
世界中のたくさんの人に観て欲しいと心から思える作品でした。

学校に行きたいと両親に訴えていたゼインの姿が健気で不憫だったけれど、実際のゼインくんもちゃんとした教育を受けられなかったようだ。。

どうか、こんな境遇の子供達が救われて欲しい、愛されて幸せに生きる権利が守られて欲しいと、心から願ってやまない…。
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