TadanobuOzawa

存在のない子供たちのTadanobuOzawaのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
5.0
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 妹は初潮がくると雑貨屋の主へ嫁に出された。
 雑貨屋の主はすぐに妹を妊娠させた。
 雑貨屋の主は病院に行かず、妹を殺した。
 僕は、雑貨屋の主を包丁で刺した。

 僕は12才になった。

 両親が家に帰って来なくなった。
 僕は乳飲み子の弟を1人で育てた。
 頑張ったけど、お金も食べ物もなかった。
 僕は、弟を売りに出した。

 涙が止まらない。
 大人はクソだ。
 僕の人生もクソだ。

 こんな物語ですが、現在の僕らの生きている世界の話です。日本から18時間くらいで行ける国で起きています。

 貧民街で出生届を出されずに生まれる子供たち、紛争による難民、そして、彼らをお金の為に販売する人たちを描いています。

 フィクションですが、少年の純粋な気持ちをセリフにしていて今起きている現実として深く刺さりました。

 印象的だったのは、この少年は、万引きはするけど、他者からの施しを受けない生き方を貫いているところ。他者から何かを得る時は、自分がその人に返せる事がある時だけでした。決して、「ありがとう」とは言わないけど、感謝を行動で示します。
 この少年の生き方も物語を面白くしている要因の1つです。

 こんな事が起こる原因は、貧困と格差社会です。貧困と格差社会の原因は、民族、宗教、戦争などです。そして、貧困や格差社会は豊かな国を標的にしたテロの原因にもなり得ます。

 僕らが豊かに平和に暮らせるのは貧困な国で武器を必要とするからとも言えます。
 自分がクソだと自覚出来た映画です。

 存在のない子供たち
 ガーデンズシネマ
 2020.04.07