ナツミオ

バハールの涙のナツミオのレビュー・感想・評価

バハールの涙(2018年製作の映画)
4.0
WOWOW録画鑑賞

場所は中東・イラク北部。
IS(イスラミック・ステイト)と戦うクルド人女性部隊「太陽の女達」の女性指揮官バハール。彼女を取材するフランス人ジャーナリスト・マチルドの視点から彼女らを、戦争を背景に描いた人間ドラマ。

バハール自身はフランスの大学で学び、弁護士となって家族と故郷で幸せな生活を送っていたが、
何故ISと戦うことになったか、
過去の過酷な回想、
息子をISから助け出すための戦い。

複数の女性部隊員達への取材より製作された作品。

実際、観ていて何回も胸が詰まりそうになります。
バハールを演じたゴルシフテ・ファラハニの目の表情がとても良かった。



以下、ネタバレ


最後エンディングでマチルドの記事が響きます。

「聞こえる?」
「何が?」
「静寂よ」

バハール隊長は目を閉じ霧で覆われくすんだ音の不在に集中した。
花柄のスカーフがその髪を覆う
心ならずも古の時代から逃げてきた女王のようだ

気温0度の寒さの中
雲は木々の梢を抱き
山と踊り大地と戯れている
目にした恐怖をかき消すかのように
彼女たちはそこにいる

風の中、全てに抗い立っている
想像を絶する経験だ
一夜にして7千人の女性が連れ去られ性的奴隷にされた
「女性」という時
私は現実を認めていない
その中には子供たち少女もいるのだ
突然アイデンティティを失った子たち
か弱い存在が強姦され売られ拷問を受けた
半数以上が数ヶ月以内に逃げ出してきて戦いに参加する女たちが出てきた

女性戦闘員は歌う
「この体と血が土地の子孫を育む」
「母乳は赤く染まり私たちの死が命を産む」
「私たちの信念」
「新しい日の始まり 新しい時代がやって来る」
「女 命 自由の時代」

多くの戦争 多くの兵士を見てきた
でも女の戦場の取材は初めてだ
体中で恐怖を感じる
こんな弱さはもう失ったと思ってた
全てを見た気になり感覚がマヒしてても
この仕事をする理由を急に思い起こす
惨劇を生き抜いた人々に突然 生命力を注がれるのだ

バハールに「真実」を書くよう頼まれた
語りたいのは打ちのめされながらも
再び立ち上がる女たち
倒れても後を継ぐ者がいる

私 戦争記者のマチルド・Hは彼女たちの歌声に震える
士気高揚の歌 力強い歌 先祖代々伝わる歌 立てと鼓舞する歌

人間のあり様に抗う希望
ナツミオ

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