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アメリカン・アニマルズのtsuyocinemaのレビュー・感想・評価

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
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【アメリカンアニマルズ】
アメリカで4人の大学生が時価約12億円の本強奪を狙った実際の窃盗事件を元に映画化したのが本作。
ケンタッキー州で退屈な大学生活を送るウォーレンとスペンサーは退屈な日常を送る中、ふつふつと何者かなりたいと焦がれていた。ある日、2人は大学図書館に保管されている時価12億円を超える画集を盗み出す計画を思いつく。2人の友人で、FBIを目指す秀才エリック、実業家として成功を収めていたチャズに声をかけ、4人は犯罪映画を参考に作戦を練る…

実話を元にした映画なのだが、本人と関係者も出てきて作中の役と行き来する構造というのがなかなか奇妙な演出。
またネタが事実は小説より奇なりな『「映画を参考に強盗をする」ような映画みたいな実話』をスパイシーな演出とテンポ、カメラワークとフィクションをふんだんに混ぜ込んで極上のエンターテイメントに脚色した映画。
そして記憶違いか、見ている視点の違いか、スペンサーとウォーレンのどちらかが嘘をついてるのか…話者の疑わしさも観客を迷わせる構造が最後まで効いていて、それでも人間は何かしらの物語を信じないと生きていけない諦観のよつなものを感じさせる。

ここまで書いていて、やはりこの映画は非常に変な作りだと振り返る。一見普通なのだけど、最初からズレてる感じ。虚実皮膜、曖昧模糊、奇々怪々…そんな感じが 何者でもないが何かになりたい、なれていない焦燥感、何か刺激的なことをやること自体が目的という若者の特性にもあっているし、入念な計画をトンマに台無しにする感じにもあっている。
人間とは(特に若者)は奇妙な存在で、だからこそ変な行動に出て、突破なことをしでかす。
そしてこの映画ははその変な感じを見事に映画に落とし込むことに成功できた変な映画だと思う。(オチの彼等の人生も含めて)
純粋な映画的な技術としては逡巡や困惑の心理描写の映像と音楽による表現は素晴らしく、特に計画実行を断念した時のシーンは共感しすぎて自分も健やかに重圧から解放されたくらいの没入感を持たせる演出だった!
どうでもいいけどスペンサー役の眼の虚空っぷりがオードリー若林に似すぎ!!
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