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アメリカン・アニマルズのmeooowのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・アニマルズ(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「特別な何かを待っていた」

青年期に直面する漠然とした不安感を可視化した、実和に基づく話であり、『聖なる鹿殺し』でその存在感を嫌と言うほど見せつけられたバリー・コーガン君が出ていると来たら、観るしかなかった。
あとは伊坂幸太郎氏の著作でオーデュボンの本についても多少の知識はあったので、本当に、軽いクライム物程度の認識で映画館を訪れたのが間違っていた。

これは、今尚、消えない傷と後悔を抱えながら、それでも当時を振り返り、未来へ向けて歩こうと藻掻く、加害者四人の、贖罪のドキュメンタリー映画だった。

アドラー心理学的な共同体心理が未熟で、どこかへ行きたいの「どこか」や、何かを成したいの「何か」が分からない時期特有の無鉄砲で杜撰な様を、変に格好つけずに真正面から晒した描き方が素晴らしい。彼らにとって、理想像は『レザボア』であり『オーシャンズ』シリーズであるが、現実はそうはいかない。容赦の無い現実の描写の後に、本人のカットが挿入される演出は、この映画が只の青春クライム映画ではないと声高に訴えてくる。
それ故に、広告がそういった娯楽映画さながらに謳われているのが悲しくなった。本質は何処にあるのかを宣伝せねば「計画がお粗末過ぎ、誰にも共感出来ない駄作だった」という感想で溢れても致し方が無いと思うのだ。
そこは、どうでも、良いというのに。

バリー・コーガン君は流石の存在感で、現状への不安感を人一倍に醸し出していた。今作ではきちんとした人間の役だったが、それでも時折見せる何も映していない空っぽの瞳に『鹿殺し』を見てしまい、彼にはこういった不穏な役が合うのだなと、『ダンケルク』を綺麗さっぱり忘れた頭で思った。彼は後に、とんでもない怪物を演じ、より一層バリー・コーガンという役者になっていくような気がする。
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