りっく

モンパルナスの灯のりっくのレビュー・感想・評価

モンパルナスの灯(1958年製作の映画)
4.3
陰鬱な作品ではあるものの、画家モディリアーニのあまりにも暗く深い孤影と、彼を見つめる周囲の人間たちの人物描写の丁寧さ、暗いパリの部屋と陽光あふれるニースの対比などベッケルならではの雰囲気描写の巧みさが折り重なり、観るものの脳裏に孤独というものが一体どんなものなのかを植え付けてみせる傑作。

特に画商を演じたヴァレンティノの、まるで死神のような存在感は圧巻で、モディリアーニが孤独という奈落の底に自ら足を踏み入れ、死の影が濃くなるのに比例して彼にひたひたとにじり寄ってくる霧深い深夜の街角での場面はまさに絵画そのものであり、抽象的な空間設計が見事な効果を発揮している。

自分の作品が、商品のラベルになり、まるでティッシュ配りのように客に無視され、そして買い叩かれる様。画家としての高潔で孤高の魂を頑なに守り、その魂を売ろうとしても誰にも見向きもされず、その魂が死後に弄ばれる。なんとやり切れないラストカットだろう。
りっく

りっく