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⼗年 Ten Years Japanのariiiのレビュー・感想・評価

⼗年 Ten Years Japan(2018年製作の映画)
2.5
十年後の未来。
十年前が2008年。そう考えるとそんなに先のことではないような、でも、この十年で時代は大きく変わったような。
高齢化が進む現在の日本。テクノロジーの進化が著しい昨今。
PLAN75。それは、75歳以上の高齢者に安楽死を推奨する国の制度。
人の一生って何だろう。
何のために生まれ、死ぬのだろうか。
75歳以上の低所得者や障がいを持っているかたがたをターゲットに安楽死を推奨し高齢化をせき止めようという考えに対し、人々はどう思うのだろう。はたまた自分がその対象になったとき、どう考えるのだろうか。
わたしは観ていてただただ恐ろしいなとしか思えなかった。
右手が不自由なおじいさんは道で野垂れ死ぬよりはマシと言っていた。いきなり10万円を支給されても使い道がなさそうだったし、命日を決められて不安感に襲われていた。
機械的に首にシールを貼っていて、そもそもそんなので苦しまずに死ねるものなのかと思ったけれど、貼っている看護師さんは何も感じておらず気持ちがわからなかった。
どういう風に死ぬのかなんて想像もつかないけれど、もしこのような制度があったとしたらどうするのだろう、どういう日本になるのだろうと考えながら観ていた。答えは出なかったけれど。
自分がなぜ生きているのか、何のために生まれて死んでいくのかなんて明確な答えを持ちながら生きている人は圧倒的に少ないと思う。
それを探し続けるのが人生なのかもしれないし、もしかしたら死ぬときまでにも答えは見つからないかもしれない。だけれどそれでいいと思う。儚いからこそ美しいと思いたい。
次はAI教育が進んだ小学校が舞台の、いたずら同盟。
最初なぜこんなタイトルなのかと思ったけれど、きっといたずら好きの3人のことを指していたのかな、と。
AIによって厳しく管理された小学校は正直不気味だった。先生がいる意味を見出せていなかったし、子ども同士のケンカも起こる前に止められる。AIに支配された空間にいる人たちは皆機械のようだった。
街に活気も見られなかったし、感情がどこかに消えてしまったようだった。
こんな未来は嫌だと思った。きっとAIによって管理されていることで事件などはなくなるとは思うけれど、子どもは子どもらしく元気でいてほしいし、生身の人間に教育をしてほしい。
デジタル化やテクノロジーの進化は人間を支配してはいけないと思う。
その流れでいうと、次はデジタル遺産が登場した、DATA。
その人の全てが写真や情報で残るのはどうなのだろうか。
ほとんど記憶のない母親のことを知っていけるのは嬉しいとは思うけれど、本人にしかわからない思い出までもは知りたくない。特に、遺産なので亡くなった人のものだから、その真実は誰にもわからないという点が厄介だと思う。
「いつから人の全てを勝手に見られるようになったのだろう。」こんな感じのセリフが印象的だった。スマホは持ち主の分身とも言えるくらいの情報を持っている。これはもしかしたらもうすでに始まっている話なのかもしれない。
結局は知らないほうが幸せなのではないかな。
このお話は、キャストが豪華だった。
杉咲花ちゃんと前田旺志郎くんの雰囲気、田中哲司さんの黙って見守る父親の雰囲気がとても良かった。
だけれどもデジタルに温もりはないし、リアルには絶対敵わない。
その空気は見えないに関しては、なぜ地下での生活を余儀なくしているのかが観ていてわからなかった。放射能汚染から身を守っていたと知ってからは納得した。
地上の生活に憧れる女の子の空想が、アニメーションを使ってかわいく描かれていた。
日本に徴兵制度が施行された物語である、美しい国。
美しい国の定義が何かは捉え方次第だとは思うけれど、映画で描かれていた国は私は美しいとは思えなかった。
現在の生活の中に徴兵制度があって、ミスマッチ感というか、現実味がないというか。
感覚としては、大賀さん演じる人と同じだった。戦争が現実的でない感覚。どこか別の世界のことというか、身の回りで起こるはずがないと思い込んでいるというか。
全てのお話に関して、十年後にこんな状況になってるわけないだろうという見方と、もしかしたらこんなことが起こりうるかもしれないという見方ができた。
少し政治的な部分があったとはいえ、まだ間に合うなのか、もう遅いなのか、社会派な問題提起だったと思う。
十年後の日本というテーマでしか繋がりのなかった5つのお話の中には、退屈してしまって眠くなってしまった部分もあったけれど、一つ一つにちゃんと考えさせられるポイントがあったし、少しだけ未来を想像するきっかけにもなった。
わからない先のことを考えるのも大事だけれど、結局は今をどうするかになってくると思わされる。
今を全力で生きていれば、どんな未来がきてもきっと大丈夫だと信じたいし、どうにかなると思いたい。
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