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キスから始まるものがたりの都部のレビュー・感想・評価

キスから始まるものがたり(2018年製作の映画)
2.6
古典的なティーンズラブコメディとしての面白味は確保しているものの、時代錯誤を覚える男女描写は浅慮でそこで生じる性別の加害性を描きながらも、それを向き合うべき問題として処理せずに放置する物語構造には『古典的』ならではの問題が感じられる作品。

本作で褒めるべき点を上げるとするなら、それは異性の親友関係を維持したままに物語を展開させた潔さで、これで安易な三角関係を始めていたら反吐を禁じ得なかった。かように異性のBFFによる距離感の微笑ましさの再現性の構築には成功しているが、そこでの葛藤や亀裂は物語開始時点で提示される予想の範疇に収まり、それが事務処理的なドラマとして物語に微小な位置エネルギーしか与えてないのはどうかと思うが。

原題である『The Kissing Booth』──これはチャリティイベントとして生徒間でのキスをある種の売り物とするというものだが、マジでいつの時代の話だよと恐れ戦く。物語に大きな変化を齎すイベントとして配置されているが、チャリティの為にスクールカースト上位の男女を集めようとする主人公二人の思惑は明確な不快感を催すそれで、美形ゆえの行動正義的な側面が見て取れるのは爽やかな恋愛ドラマに水を差している。

また兄:ノアの衝動的な暴力性の問題は幾度か問題になるものの、解決策として講じられるのは『体の良い女を充てがう』というおよそ信じられないもので、作劇上で面の良い野獣のように扱われる彼の人間性の魅力はやはり曖昧模糊としたまま終幕を迎えるので、誰よりも彼こそがポップさを売りとしただけの脚本の犠牲者とも言えるだろう。2に続く。
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