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体操しようよの328のレビュー・感想・評価

体操しようよ(2018年製作の映画)
2.5


草刈正雄がさえないおじさん役、という設定に「いや、無理があるでしょ」と思いながら鑑賞開始。出てきたときの見てくれの凛々しさに「やっぱりね」と反応しましたが、そこは流石。物語がすすむにつれ、しっかりさえないおじさんとして違和感はなくなりました。むしろ「色男過ぎ」具合が、より残念感を醸しだしていますね。

その草刈正雄演じる早くに妻を亡くした主人公が、真面目に無遅刻無欠勤で勤め上げた会社を定年退職し娘との確執もうまれたなかで、ラジオ体操に出会います。というか、ラジオ体操をしていた素敵な女性(和久井映見)に惹かれてしまいます。
しっかりその女性にたぼけて(夢中になって)、その女性にも雰囲気通りに隠された過去のトラウマがあり、なんやかんやと物語は進みます。
俳優陣は皆、キャラクターに合っていて目立ち具合のパワーバランスもよく、良い感じです。

展開は予定調和、ご都合主義のとんとん拍子にタイミングバッチリのハプニングが定期的に訪れます。
まあ最初から「こんな感じですよ」という雰囲気を出してくれていますので、備えてはいましたが徐々にダレてしまいました。俳優陣のお陰か退屈とまではいきません。
あと「あまり体操しないんだな」とも思いました。

しかし、ラストのラスト。主人公が一人暮らしとなってからのシーンはそれまでと一転してかなりダークで重たいものとなります。数分の短い間ですが、グッと引き込まれて、この映画の印象も一気に良い方向へと傾きました。
主人公にとって「なにもない」筈だった定年後の生活はラジオ体操と触れることで彩を得ます。感情も体も予定外に動く人生がはじまったと思い込まされていました。そこにこのラストシーンは、それらは一時的な賑やかさであって、その影には寂しさ、侘しさ、空虚感が隠れていること、確かに実存していることを突きつけられます。

主人公にとって新しい朝が、希望の朝となることを、願うばかりです。
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