このレビューはネタバレを含みます
田舎の閉塞的なコミュニティとか、少人数でやりくりしている会社の妙な距離感の息苦しい感じがリアル。干渉してもしなくても距離感が近いから変な摩擦がうまれる。そういうのが本当に嫌いだから特に身に沁みた。
撮り方の印象としては、役者に集中しすぎて周りの風景が疎かにされている気がした。序盤の方は、寒い日にガスコンロに火をつけてお湯を沸かすカットとか、情緒のあるシーンがちらほらあって感心していたけれど、途中からすっかりなくなってしまった。せっかく、木工所とか深夜の寂れた商店街とかいいロケーションで撮影しているんだから、背景をもっと取り入れたらもう少し味わい深い映画 になっていたと思う。
物語の中で自殺とか生死に感する描写が少なからずある。主人公は自殺しようとするまでに追い込まれている設定なのたが、そこが理解できなかった。
衝動的に、或いは明確な殺意を持ってバイト先の店長を殺して、自分の未来に絶望して命を絶つなら解る。なんとなくどうでもよくなってガスが漏れているのを黙って見ていたみたいな、意思のない理由で死なせてしまったことに罪悪感を覚えるのはおかしい。それを自殺の理由にこじつけるのは甘えでしかない。事故で処理されている以上、生きていく道は残されているのだから、惨めでも苦しくても精一杯生きいこうとする物語なら共感できたのかもしれない。
監督デビュー作で、ネームバリューのある是枝組出身みたいに紹介されてハードルが上がるのは気の毒だなと思う。もう少しキャリアを重ねて身軽になったら、もっといい作品が撮れそうな気がするので次回作に期待したい。